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第161回ロンドン会座報告

冷え冷えした12月12日の午後、第161回ロンドン会座のために、オンラインと対面を合わせて、三十人余りの人々がお仏間に集まりました。これは今年最後のロンドン会座でしたので、二面が合併されていました。第一にはいつもの宗教的会合であり、その後は忘年会となっていました。お会座では心の籠った正信偈、念佛和讃の唱和で始まり、次の蓮如上人の御文の拝読、和文は建心師によって、英文はクリス・ドット氏によって、読み上げられました。

勤行の後、アンドリュー・ウェブ氏が「僧伽での私の一年」と題して講話をして下さいました。お話は、アンドリューさんの三輪精舎と正行寺僧伽での過去一年の経験について深く考え抜かれた内省でした。アンドリューさんは、ただ自分自身の思いや経験を表現するために書かれたのですが、それは今年一年の僧伽全体の主要な出来事ばかりでなく、僧伽に生きる多くの人々の個人的な経験をも総括するものの如くでした。アンドリューさんのお話全体に一貫して流れていたのは、僧伽で聞かせて頂いた教えを、次から次に忘れてしまうことへの絶えざる反省でした。この点を表現することによって、アンドリューさんは私自身の経験を、おそらくは僧伽の他の人々の経験を、言葉にして下さっているのだと感じました。

アンドリューさんの今年一年の纏めは、家族と共に日本へ旅し、正行寺の夏季錬成会に参加した貴重な御縁についての熟考から始まりました。アンドリューさんは、大陸間の旅行はいわずもがな、ロンドン内の移動さえも困難にしていた過去三年の環境に言及されました。アンドリューさんのお話は、この輪廻の世界の無常にして不確実な特質を思い起こさせてくれ、だからこそ佛法を聞ける如何なる縁も決して見逃してはならない貴重な機会であることを教えて下さいました。

アンドリューさんは、正行寺への旅についての様々な心配は、周りの人々に対する疑い(信頼の欠如)が現れたに過ぎなかったという自らの領解を話して下さいました。正行寺に到着するや否やそういう疑いは雲散霧消したことでしたが、アンドリューさんは疑いということに関して、竹原智明師から聞かせて頂いたみ教えを話して下さいました。そのみ教えは、「日常生活においてそのような疑いは差し置いて一心に阿弥陀仏に帰依することの重要性」ということでした。アンドリューさんの深い心のお話の中でも、私はこのみ教えの深遠さに感動しました。私たちの不安定な信頼しがたい世界において、私たちの阿弥陀仏への信仰は、私たちが本当に立脚できる揺るぎない基盤を私たちに与えて下さいます。

アンドリューさんは、正行寺に滞在し夏季錬成会に参加する彼のために、英語を話せるお同行が集まって小班を編成し迎え入れてくれたこと、そして冬季錬成会においては、当門様のみ教えが三輪精舎の英語を話すお同行にも受け取れるように、その英国班のメンバーが台下のご著書を英訳して下さっていることも教えて下さいました。

アンドリューさんは更に、日本から帰国して以来の僧伽全体の重要な出来事を要約し、その重要性を経験させて頂いたことを述べられました。それらは、真宗の信を主題にした第30回疏開リトリートや、ともに三輪精舎僧伽の先駆者であるジョンホワイト教授の第一回ホワイト先生を偲ぶ会と佐藤博子夫人の第四回追悼法要などです。

アンドリューさんはまた、佐藤顕明師によって現在進行中の親鸞聖人御消息の英訳についても触れ、「はからい」という日本語の翻訳について即席的に言及されました。従前の英訳は、「はからい」をcalculation (計算)とかcontrivance (目論見)などと訳してきていたのですが、顕明師はより中立的な言葉であるarrangement を選ばれました。この方が、私たち自身の自力のはからいと阿弥陀仏の他力のはからいの対照をよりよく表現します。アンドリューさんは、日本への巡礼に先立っての彼自身の不安に関連させて話されました。阿弥陀さまにすべてお任せするというよりも、世間を自分の要望に同化させようとする企みについての反省は、私の中に深い共鳴を呼び起こし、私自身に向けての助言であるかのように聞かせて頂きました。

アンドリューさんのお話の後、お同行の所感が続きました。お同行の所感によって作り出された雰囲気は、アンドリューさんのお話に深く共鳴したのは、私だけではなかったことを知らせて下さいました。お話し下さったお同行のほとんどすべてが、来年正行寺へ参詣したいという希望を表現されました。アンディ・バリットさんは、自分自身の宗教経験は二十年の長きにわたるアンドリューさんとの友情で常に強められ高められてきたと述べられました。アメリカからオンライン参加のお同行、ニール氏は、ご自身も同じ困難を持っておられることから、アンドリューさんの家庭状況に対して理解と同情を表明されました。間もなく正行寺を訪問される予定の鈴木佳さんは、正行寺に参詣させて頂けることを当たり前と思っていたと懺悔されました。コロナに罹っているにもかかわらず日本からオンラインで参加して下さった渡辺紳二郎氏は、長い間英国に行けていないにもかかわらず、アンドリューさんによって英国同行に繋がらせて頂いたと述べられました。

アンドリューさんのお話に対する所感が続いた後、午後のお会座の宗教的な部分は、石井建心師の三輪精舎予定告知と佐藤顕明師の感動的な内省の言葉で閉じられました。顕明師は、学問的な仕事も大事であるが、それは信心に対しては二の次に来るべきであるのに、最近は信心の沙汰を第一にしていなかったと懺悔されました。

お会座終了後、忘年会が開催されました。コロナ禍発生以来三年にしてはじめて持てた忘年会でしたので、これも特に重要なものでした。渡辺礼さんのチェロ演奏とクリストファー・ダクスベリー氏のギター演奏に加えて、ダクスベリ―・陽子さんの「島唄」の絶唱がありました。学生会メンバーは前もって作ったカップケーキの販売によって、三輪精舎営繕基金に貢献しました。

この本年最後のお会座は精神的に充実したものでした。私個人としましては、この報告を書かせて頂く好機を頂戴したことに感謝しております。なぜなら、それによって、私はアンドリューさんのお話を再読し、アンドリューさんが話さねばならなかったことを本当に熟考させて頂くことができたからです。ただ阿弥陀仏にお任せすべき時に、身の回りの人を疑ってしまうということや、本当は自分の手を離れてしまっているのに身の回りのすべてを常に自分で何とかしようとするはからい心ということに焦点を絞ってのアンドリューさんのお話は、私自身に共鳴を呼び起こして下さいました。

合掌

2022年12月11日

マックス