第152回ロンドン会座報告―「阿弥陀佛 超越と他者性」
2021年4月11日、33名のオンライン参加者が三輪精舎住人に合流して、ジョン・ホワイト教授が自ら「最後の話」と宣言されたご講話を拝聴させて頂きました。三十年に亘る研讃と熟慮から出て来るホワイト教授の学識深く滋味溢れるご講話は、限りある概念的思考領域とそれに対する執着から生ずる対立を、この念佛僧伽が乗り越えて行けるようにという先生の甚深なる願いを表明するものでした。偉大な大乗仏典の精神を以て、ホワイト教授は私たちに「超越」と「他者性」という言葉の使用を考えるように励まして下さいました。なぜなら、それら二つの言葉は、否定によって言語の限界に取り組もうとすることから生ずる二極化の問題を避ける助けと成り得るからです。
ホワイト教授のご講話に対しては、沢山な質問と所感が出てきました。三輪精舎の理事の一人であるアンドリュー・ウェブ氏は、ホワイト先生に感謝の意を表明し、先生のご講話はいつも私たちに明確な方向を示して下さいますとお礼申し上げられました。サム・ケリー氏などのお同行もこの好機を捉えて、精神的出会いの場として三輪精舎を守り育てるために、ホワイト先生が為し遂げて下さったすべてのご恩に対して深く感謝申し上げました。それに対して、ホワイト先生は「皆さんは私の人生を変えてしまいました。私たちの誰にも永遠な自己はありませんし、私は確かに三十年前の私ではありません」、「大事なのは、常に興味を持ち、希望も恐怖も懐かず集中して、瞬間瞬間を生き抜くことです。私たちはみんな間違いをします。恐れるべきではありません。進み続けてください」と応じられました。
何人かの人は、ホワイト先生に、このご講話と俳句を主題にした以前のご講話との関係について質問されました。ホワイト先生は自発性の重要なことを話され、ものを見るには、ただ虚心坦懐に見ることが大切で、ただただそれを見るために何度も何度も戻ってくるのですと応えられました。石井建心師は、今の先生のお答えは、まさしくホワイト先生が京都の有名な竜安寺の石庭を何度も何度も訪れ出会い続けて、三輪精舎の禅ガーデン構想を発展させたという事実を思い出させてくれますと言われました。建心師はまたホワイト先生の最初の正行寺訪参詣の話をなさり、ホワイト先生は自分自身と将来の人々のために人生の真実を尋ねる修行者として日本に行かれたのだと思うと言われました。
佐藤顕明師は、「ホワイト先生のご講話の背景にあるのは無縁の大悲だと感じさせて頂きました。先生が示して下さった他者性というのは、一切の争いを超える道です、唯々帰命させて頂くばかりです。南無阿弥陀仏」と結ばれました。
イギリスの詩人ジョン・バーンサイドはかつて「語りえない他者を賛美するその人自身が賛美される」と書きました。これは、僧伽に対して最後の活気溢れるご講話をなさるホワイト先生について、すべてのお同行が感じ取ったその人格の偉大さを叙述するのに最適な言葉であるように思われます。
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
アンディ・バリット
2021年4月12日